事務局長より~日日新(PROGRESS)~
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日日新Vol.R4-5
あれから11年、そしてこれから
2011年3月11日14時46分、その揺れは突然やって来た。施設を飛び出し、子どもも大人も園庭の真ん中に一つの塊となった。幼児を抱きしめ、互いに身を寄せ激しい揺れに耐えた。電線が波打ち、サッシが吹き飛んだ。
あれから11年、モニタリングポストも日常の風景、ともすると何事もなかったように生活している自分がいる。それはそれで自然なのかもしれない。けれど、懸命に前を向きつつも、辛い思いをしている人が大勢いる。受けた傷、失ったもの、その大きさに悲しみが蒸気のように噴き出している。この痛みは涙が枯れても続いていくのか。
不安は不意に降りてくる、少なくなったガソリンに、空になった浴槽に。果てなくつづく人と車の正しき列に見えない光が降り注いでいた。ふと、めまいを覚え見上げる鉄塔、カラスが2羽わたしを見つめていた。
あの時を共に過ごした子どものおおよそは、もういない。震災後に生まれた子どもも多くなっている。様々なことが変わり、そして消えていく。こうやって歴史の一つになってゆくのか。風化させてはいけないこともある。
3月16日深夜、あの時が蘇った。忘れてはならない、備えることを。
時は春。まさに、旅立ち、そして出会いの季節。震災で大切なセレモニーを失った人たちが大勢いた。コロナ渦では、様々な工夫で卒業式や入学式が行われる。
会いたい人をあとどのくらい待つのだろう。今の願いはこのウイルスを過去の教訓に変えることだ。そのために、考え、動き、祈る。あるいは震災と原発事故に対しても。あるいは遠くで起きている戦争に対しても。そして、歴史と教訓の先にあるものは、「これから」だ。4月が始まる。
たびだちは無言の校歌粛々と正しき列は証うけとる
法人事務局長 斑目 宏