事務局長より~日日新(PROGRESS)~
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日日新Vol.R5-2
徒 歩 訓 練
かつて白河学園には徒歩訓練という恒例行事があった。幼児や低学年を除いた子どもと職員およそ60名がグループに分かれ、施設から甲子までの16キロを沿道のごみを拾いながら順位を競って歩いていくのである。朝の6時に出発し、中盤からきつい上り坂にあえぎながらゴールの玉の湯旅館につくのはお昼近くだった。到着後に温泉に入り、定番のカレーを食べると心地よい眠気が襲ってくる。リュックを枕にまったりとしていると、子ども達がざわめき、いよいよ順位の発表である。到着時間と拾ったごみの量で決めるのだが、それなりの賞品も貰えて大いに盛り上がった。帰りは車で一気にふもとに下る。しかし、中には歩いて帰るつわものもいて、暗くなったころにのっそりと帰ってくるのであった。当然、それに付き合う職員もいたわけだが、私はいつも寝たふりをしてやり過ごしていた。
いま、夕方のニュース番組で県内各地のごみを拾って歩くタレントの姿が放映されているが、白河学園では30以上前に同様の活動を実施していたのである。一部の人や団体のごみ拾いがどれほどの効果があるのかわからないが、少なくともきれいになった所へは捨てにくくなるのは確かだろう。こういった活動が広がって、一人ひとり意識が高まればとても良いことだと思う。
ポイ捨てに限らず、ごみに関する問題は世界的な課題である。限りある資源の採取を抑えて、環境負荷を減らした循環型社会を実現するため、3R、いわゆるリデュース、リユース、リサイクルが導入されている。たとえが、リデュースはレジ袋を使わずにマイバックを持参すること、リユースは容器への詰め替えで再使用すること、リサイクルはプラスチックなどを分別回収し原料として再利用することである。
子ども達の未来のためにも、循環型社会を実現する文化を根付かせなければならない。法律や制度に頼るだけではなく、実際に現実を見て一人ひとりが何かをしなければと思うことが大切なのだろう。そういった意味では徒歩訓練は貴重な体験であった。ごみを適切に処理することだけではなく、出さない、削減する努力をしていく。児童養護施設も小規模化が進み、いろいろな縛りを受けなくなってきた。食品ロスを減らすため、残食の冷凍保存など日頃の生活の中で出来ることはたくさんあるのかもしれない。
そういえば確かひと瓶30円だったかな、小遣い稼ぎに拾い集めたコーラのホームサイズもペットボトルになってしまった。鍋を持って買いに行った豆腐屋もすでにない。さて、私は何から始めようか。
法人事務局長 斑目 宏