事務局長より~日日新(PROGRESS)~
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日日新Vol.R3-3
『新聞づくりから始まった』
昭和27年7月のある日のことです。白河学園に入所していた中学3年生のМ君は、おじさん(初代園長)に頼み事に行きました。背筋を伸ばし、正座するおじさんに向かい緊張していたのでしょう、もじもじしてなかなか言い出せずにいましたが、意を決し切り出しました。
「おじさん、新聞作ってもいいですか」
おじさんはМ君の眼をじっと見つめ一言。
「よし」
20枚のわら半紙の使用許可を得て、新聞作りは始まったのです。
М君を中心とした委員会が編集を行い、日常の出来事や月例行事、文芸作品、作文、4コマ漫画などが割り付けられ、社説に当たる「囁き」の欄は職員が受け持つこととなりました。理事や園内の各グループに見てもらうことが当初の目的でしたが、やがて退所者や関係の方々に送られるようになっていったのです。
川で300本もの大根を洗い沢庵を漬けたこと、軍隊払い下げの毛布をみんなで足踏み洗いをしたこと、飼っていたトンビの子、鶏、山羊、犬、鳩など動物たちとの触れ合い、子ども達と職員の泣き笑いの生活が目に見えるようです。
「白園報」という名で、施設の様子が世間に伝わった瞬間です。いわばホームページの原点ともいえるこの新聞は、子どもの声から生まれたものなのです。
子ども達との何気ない日常が、膨大な事業報告よりも的確に事実を伝えることをかつての新聞は教えてくれます。
白河学園のホームページリニューアルに当たり、社会福祉法人制度や自法人の成り立ちを顧みつつ、私たちの取り組みや目指すところを生きた言葉で発信していかなければならないと強く感じております。
かつて、20枚のわら半紙に目を輝かせ、心を込めた先人に思いを馳せて。
社会福祉法人 白河学園
法人事務局長 斑目 宏