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日日新~PROGRESS~

白河学園で出会った子ども達(part4)

 夜勤のたびに私の枕元に座り、顔を覗き込む低学年の男の子がいた。午前2時から3時ごろに自分の部屋からやってくるのだが、必ず小便を漏らしていた。殺気で目を開けると彼の顔が目の前にあり、一言「怖い」と絞り出すのであった。思わず「俺の方が怖い」と返すと、一直線に揃えられたサラサラの前髪は、私の鼻に触れるほどに接近してくるのだった。
 私の時に限ってそんなことが何回かあって、ついには最初から隣に寝かせることにした。寝相が悪く私の布団を小便で漏らすこともあったが、それはそれで可笑しくて二人で声に出して笑ったりもした。しかし、年度替わりの配置換えで小便小僧への添い寝は半年で終了となった。最後の日は朝から霙が降っていた。

 一緒に寝るようになって寝小便が良くなったわけでもないし、相変わらず悪さも続いた。けれど、私の中の何かが変わっていく不思議な感覚が生まれた。彼の安心した寝顔を見ているうちに、寝小便も悪さも愛おしくさえ思えるようになっていったのだ。

 それ以前、いつの頃までだろう、夜尿の子どもを起こして排尿させる業務があった。私も入職当時、実際に経験したことがある。泣きながらトイレに行く子どももいて、そのことも夜中に起こすことも苦痛だった。
 現在は「怒らない」、「起こさない」、「あせらない」が原則となっているようだ。子どもの成長に安全、安心な眠りはとても大切なのである。

 児童養護施設の職員配置基準は徐々に改善してきており、そこに小規模化や地域分散化、専門性の加算がつくようにもなってきている。しかし、職員が必ず一つの生活単位に泊まり、ケアニーズの高い子どもに必要な支援ができるかとなると十分な人数ではないと思う。
 労基法では、「休憩時間は業務から完全に解放させなければならない」となっている。児童養護施設の最低基準では、少なくとも一人が児童と共に起居することを義務付けているが、業務から離れるのであれば交代要員が必要であろう。まさに、地域分散化が進んでいく中で勤務体制や仮眠の扱いなど検討が必要となってきている。とは言っても、子どもに何事があって、休憩時間を理由に対応しないなんて言うことはあり得ないのだけれど。
 小さい子どもが安心して就寝できて、一人ひとりの子どもに余裕をもってかかわれる、そんな「良好な家庭的環境」が必要だ。「できる限り」の努力をすれば手が届く、そんな職員配置への更なる改善を願っている。
 
 冬の河 わたり来し靴寒きまま 母の背知らぬ少年ねむれり
 みだれ降る春の霙のたちまちに 消えては流る 少年の窓に


法人事務局長 斑目 宏

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